山で本を読むのが好きです。なかなか来ないバスや電車を待つ間も本があれば長さを感じません。そうやって少しずつ読んだ山の本を読書週間(10/27~11/9)にまとめてみました。順番はランキングではなくテキトー、批判覚悟の感想は独断と偏見であふれているので、Amazonのレビュー程度に斜め読みしていただければと思います。(私にとって本とは紙媒体のものです)
銀嶺の人 新田 次郎
ここに紹介している順番はランキングではないと書きましたが、「銀嶺の人」だけは私の中で別格、ぶっちぎり1位です。山を登る女性にはぜひ読んで欲しい、女性クライマー2人のお話。フィクションといえども、実在のモデルがいるのでリアルに迫ってきます。メインはヨーロッパアルプスですが、雪の谷川岳で遭難しかけた美佐子を助けに淑子が駆けつけるシーンはまるで映画を見ているよう、雪山の寒さを感じました。山だけではなく、下界でも仕事をしっかりとこなす2人、めちゃくちゃカッコイイ。内に強さを秘めた美佐子、あぁ、衝撃のラスト。読み終わったあとはしばし呆然としました。面白くて一気に読んでしまいましたが、もう一度じっくり読み直したい一冊。
栄光の岩壁 新田 次郎
両足先を失くしながらも岩壁登攀に果敢に挑む岳彦(実在のモデルあり)。すごいんです、すごいんですけどね、「銀嶺の人」の後に読むとなんだかなぁ。山では確かにすごいのですが、下界での仕事っぷりが、「銀嶺の人」の女性2人と比べるとどうもなんだかふにゃふにゃしていて。。。まわりの人に支えられて(特に金銭的に)よかったね、と思ってしまうひねくれた私です。おまけに春雄(こいつはフィクション)というとんでもない詐欺師が最初から最後まででてきて、こんなヤツがなぜ山に登るのか不思議でなりません。逆に広という、多少凍ってても食料をバリバリ食べ、アイスバイルを風車のようにまわすというイケメンもでてきます。「銀嶺の人」の前に読めば楽しめたに違いない。
孤高の人 浅田次郎
結末は知っていたものの、コミック版を読んでもいたので(といっても山小屋で斜め読み、違うエンディングです)、もしかしたら私の知っている結末とは違うのかも?!と期待してしまいましたがそうよね、やっぱりね。家族をもって、本人も山をやめようと思っていたところへ雪山へのお誘いが。山へ登る前から少しずつ死へ引きずられていくのが怖い。最後は読んでいるこちらの体温も下がってくる気分です。山岳小説ですが、意外にも日常生活の描写も多くこれが読む人によってはまどろっこしいかもしれません。人付き合いが苦手だったり、仕事への取組み方だったり、私にはそれが人間らしくてかえってよかったです。ウェアや行動食をつくり、地図を読み。。。スマホを見ながら山を登るのが申し訳なく思えます。「銀嶺の人」をすっとばして読んでしまった反省から、今回はじっくりと読みました。槍ヶ岳→「地球の骨の突出物」、立山連峰の朝→「太陽という指揮者の金の指の指揮棒による交響曲」などの表現があり、かっこいいな~という感想しか言えない自分が悲しい。「風化現象によって細く鋭く磨きあげられた白い岩群は、遠い昔からきめられた作法を維持するかのように、ひとつひとつが欠くべからざる美の要素として、どの一部を取っても、すべて絵の主題になり得るような配列をなしていた」この文章にひかれて燕岳に登りました。
未踏峰 笹本稜平
社会でうまく生きていけない山に無縁だった若者3人がエベレストの未踏峰をめざすお話。表紙からは浅田次郎のようなガチな山岳小説かと思いきや、笹本稜平ですもの、読みやすくさわやかな小説です。お互いの足りないものを補いながら完璧なまでのチームワークで、今まで導いてくれた山小屋のご主人パウロさんへの思いを胸に難関を乗り越えていきます。この3人が再建する山小屋にぜひとも泊まってみたい、そしてサヤカの山小屋ご飯を食べたーい。読後は甘ーいミルクティが飲みたくなりました。おもしろくて夢中で一気に読み、読後はすがすがしくも優しい気持ちになりました。が、一日たつと、うまく行き過ぎているしありえないよねーと冷めた気持ちになるもの正直なところ。
駐在刑事 笹本稜平
読んでいるところ
黒部の山賊 伊藤正一
2021の夏に北アルプス・三俣山荘へ泊まる前に読了。山荘再建を中心に、苦労話というより、自然への畏怖、山賊に対してのリスペクト、そして黒部への愛がつまったエッセイ。山賊というとおいはぎというイメージでしたが、超人的な山男ととらえたほうがいいかも。時に牙をむく自然よりも化け物よりも、何よりも怖いのは人と思いました。悪天候の中友人を置き去りにし、助けを求めるどころか山小屋でしれーっとしている人のほうがよっぽど恐ろしいわ。これを読んだ多くの人が雲の平エリアへ行くたくなると思うのですが、私はむしろ逆で、私ごときがこの北アルプスの聖域に踏み込むなんて畏れ多いことなのではと思ってしまいました。著者って山小屋経営者であり、本業が物書きではないですよね? 文章がとても整っていて美しい。おーい、ヤッホー
淳子のてっぺん 唯川恵
田部井淳子さんの充実したうらやましいまでの山人生のお話。半分までは楽しく読みました。アンプルナのあたりから著者が主人公淳子をよく書こうという意図チラチラ見えしらける箇所が。いかにも私がんばってます!というのも押しつけがましい。一歩ひいて隊を冷静に見ているが、見方を変えれば傍観者、なんでもかんでも隊長にやらせて副隊長としてもっと隊長を支えてもよかったのでは。「でも私、料理できないし」「でもお金ないし」などもじもじするのは可憐なところをアピール? 周りに自分の背中を押させるようにもっていきます。エベレストメンバーを募集する中、他の人たちが「でもお金が」「でも休暇が」ともじもじすると、淳子「どうして実現するために行動を起こさないのか」と思うのだが、いやいやあなたもでしょ。他のメンバーを落として、主人公を際立たせる書き方がどうも。。。 また、誤字?も数か所あり、今井通子(「銀嶺の人」のモデル)がある箇所ではそこだけ「川井さん」になっていました(初版)。全体的に少女マンガの世界(岩で動けなくなる淳子に、「俺を見ろっ」というシーンなど)、イライラしながらなんとか読了。田部井さん好きだし期待度特大だったため、文句ばかりになってしまいました。すみません。。。
天空の犬:南アルプス山岳救助隊K-9 樋口 明雄
新人ハンドラー夏実と救助犬メイが南アルプス・北岳を中心に奮闘。私の歩みのようにゆっくりと話は進みますが、残り1/4ほどのところから一気に動きます。んん?これはサスペンスだったの? えっアクション? 悪天候の中救助ヘリが突っ込んできたり、ヘリにぶら下がったまま移動したりもうトム様もびっくりのミッション・インポッシブル。救助犬のメイはとても賢く、完全ネコ派の私でもやっぱり犬だよね~と思いました。
脱獄山脈 太田蘭三
奥多摩から後立山連峰を縦走する脱獄囚4人、主人公はついに日本海へ。はじめは早く捕まってしまえと思っていましたが(特に詐欺師のおっちゃん)、山を歩くことで、さわやかに?人が変わっていくのが面白い。とにもかくにも超ロングの縦走がうらやましい。
山小屋の灯
ステキな山小屋を写真とともに紹介。山小屋好きの私としましては期待度200%で読みはじめ、きっと山小屋に泊まりたくなると思っていましたが、そうでもなかった。山を登らない友人がこれを読んで「すっごいいいね、山小屋って。ぐれぶちゃんはこんなところ泊まっているのね」 鵜呑みにしないほうがよい。芸能人が取材で商店街を歩くといろいろタダで食べさしてもらったりよくしてもらうでしょ。 アレよ、アレ。
山のクリスマス ルドウィヒ・ベーメルマンス
石丸謙二郎さんの山カフェで紹介された絵本。インスブルックの少年が、山の管理人をするおじさんの家でクリスマス休暇を過ごすお話。インスブルックというだけでもうらやましいですが、山小屋(避難小屋)に行ったりと雪山を満喫。犬にスキーをはかせて滑らせ、犬を恐怖に陥れるのは。。。子供っておそろしい。チロル帽をかぶっていたり、挿絵もかわいらしい。
羊と鋼の森 宮下 奈都
これは山とはまったく関係ないのですが、空気感が冬の北八ヶ岳に似ている、と私は勝手に思っています。舞台は北海道、静かで美しく、凛とした空気、まるでピアノの音のよう。青年外村が調律師として自分の理想とする音をもとめて苦悩するお話。これといって事件が起きるわけでもなくロマンスもないので物足りなさを感じる人がいるかもしれません、岩稜を登る人が北八ヶ岳に物足りなさを感じるように。北八ヶ岳、私は大好きです。
本は友人や会社の人が貸してくれたり、図書館で借りたり、山のガイドブックはフリマアプリで購入しています。Amazonの商品紹介リンクを貼り付けるにあたり、最近の文庫の値段を知りました。もうほとんど1000円じゃん! 本も私にとっては贅沢品になってしまいました。。。
ここからコミックです。
岳
このブログを読んでいる方なら必ずや「岳」は読んでいると確信しております。え、読んだことない? こんなブログ読んでないで「岳」を読んでね、必須です。舞台は北アルプス、救助のお話です。これで山にはまった人がまわりにいます。またある程度山を登った人が読んでも、この小屋はあそこだな、このシーンはあのへんかな? この小屋番さん実物に似てる、などと自分の山と重ねながら読むのもまた楽しい。最初に読んだ時はあのラストに不満だったのですが、自分がそれから歳をとってまた読むとあのラストでよかったのかとも今では思っています。好きなエピソードは16巻第7歩「それぞれの山へ」、下界にも登らなくてはならない山がある。
山と食欲と私
単独登山女子の鮎美ちゃんが山でつくるご飯のなんとも美味しそうなこと! そしてその幸せそうな食いっぷり。これがきっかけで私はガスとクッカーを購入しました。たまに鮎美ちゃんが不味そうなものをつくるのもご愛敬。ガツガツ岩を登るような山歩きではなく、自分のレベルで楽しんでいるのがマネできそうで親近感がわきます。最初は山とご飯に真摯に向き合っていたのですが、10巻あたりから登場人物が多くなり話もわちゃわちゃしだしたため、12巻以降は読んでいません。 んがっ、2022年ミヤマキリシマの季節に九州・法華院山荘にあったので読んでみたらおもしろくなってるではありませんか!(何巻だかは忘れました) また読みます。
山登りはじめました
なんとなく読了。山友なっちゃんは鈴木ともこさんの作品が大好きでイベントにも行ったと言っていたから、心のキレイな山ガールは楽しく読めるのでしょう。コミックエッセイ。
ヤマノススメ
山のレベル的に見てもはまるだろうと思っていたのですが、アニメを見て挫折。
ハイジと山男
山小屋で働く女子ハイジのお話。典型的な少女マンガ、展開がよくありそうなパターンに思えたので即終了。これをどこで読んだかというと、赤石避難小屋。山小屋の蔵書では赤石避難小屋がダントツ一位です。なぜこのような少女マンガが、しかも「避難」小屋に? あの酒飲みの小屋番さんと少女マンガがどうしても結びつきません。どなたかが持ってきたのかな。
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